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城崎温泉は元々視察が多い街なのです!

2016.02.24|その他徒然に・・・

現在、号泣会見で有名になった野々村元県議の公判中ですが、野々村氏がテレビで取りあげられる度に100回以上視察したと嘯いた私共「城崎温泉」がセット販売のように毎回テレビに映し出されます。全国の皆さまに対してはたいへんなPRにはなるものの、嬉しいような…、悲しいような…。
「城崎温泉って、そんなに何度も視察するほどのところか?」的なコメンテーターの有り難いご意見も多々賜っているのも事実。まぁ、野々村氏が100回も視察に来られたかどうかは別として、実際に城崎温泉には年間多数の人々が視察に来られ、また学生さんは卒論や研究の題材とされていることをどうやらコメンテーターさんはご存じ無いようであります。

高度経済成長期にあっても町並みを守ることを優先し、旧きを壊して大規模ホテル旅館を乱立させなかった城崎温泉は、お陰様で今では日本国内のみならず海外からも注目をされています。
ただし、この城崎温泉の町並みは偶然の産物かというとそうではないのです。それを探求するところに城崎温泉視察の理由が存在するわけなのです。

城崎温泉は「共存共栄」で表されるように「個」よりも「全」に重きを置くことが基本理念とされています。それを分かりやすく表したのが、城崎温泉は「まち全体で一軒の旅館」という例えです。駅が玄関で、道路は廊下で、外湯が大浴場で、土産物屋が売店で、そして約75軒ある旅館が客室で…、ということで、お客様を旅館内に囲い込んでしまうのではなく、ゆかた掛けで外湯めぐりをし、そぞろ歩きをしてまち全体で楽しむのが城崎温泉流なのであります。「個」という我が旅館のことだけを考えるならば、宿泊客の消費行動は極力自館の中でしていただくのが良いに決まっています。自分の旅館に泊まっているお客の消費行動をわざわざ館外に促してしまうことは通常はとってもお人好しな愚行だとたいていの経営者は考えると思います。

実は城崎温泉には条例や旅館同士で取り決める「城崎ルール」というものが存在しています。その全てを披露することはできませんが、例えばこんな内容です。城崎では私有の温泉は認められていません。温泉は町民の共有の財産で使い放題にはできないのです。また、旅館の大浴場はその客室数によって大きさが決められています。外湯以上にあり余る大きなお風呂を作ってはならないのです。そして、車での送迎にも厳しいルールがあります。時間帯や停車場所が旅館毎に決められているのです。自館のお客様だけの満足度向上を考えるならばバンバンピストン送迎をしたいところですが、他館のお客様にも配慮をし、安全にそぞろ歩きをしていただけるよう車の往来は極力自粛する方向に向いているのです。全ては「個」よりも「全」に重きを置いた考えであり、「個」が自分勝手な行動をすることはタブーなのであります。そして旅館経営としてはわざと余力を残して、「全」の為に言わば飛車角抜きの経営に徹しようとしているのです。
これって、「お客様本位の考え方では無いよね」と思われる方もおられることと思います。「手抜きサービスなのではないか」というご意見を賜ることも正直あります。バリバリの経営者ならば、こういった温い(ぬるい)経営に苛立ちを覚えられる方もおられることと思います。ただ、こういった「共存共栄」の精神を長年に渡り、何代にも渡って粛々と続けてきたからこそ、結果として現在の城崎温泉の町並みがこのように遺り、そして高い評価をいただいているわけなのです。したがってそういったことに興味の無いお客様にとっては、全くのつまらない温泉地ということになるのかもしれません。

ということで、このように特殊な温泉地「城崎温泉」に目を付けた野々村氏は、ある意味凄い人なのかもしれません。