おら、東京さ行くだぁ/ある下足番の上京話

2006年05月26日|普段は表に出ない裏側の話

先日のことですが、業界最大手の某旅行業者に加盟している旅館やホテルで作る“協定旅館ホテル連盟”の東京での全国総会の場(6月開催)で、当館を表彰してやるので東京まで来て下さいとの連絡が事務局よりありました。協定旅館ホテル連盟の加盟旅館数は確か4,500軒余り。そのうちのひとにぎりのわずか数軒の旅館がその総会で毎年表彰されるくらいのことは知ってはいますが、けれどもそれは全くの他人ごと、当館なんぞは「お呼びでない」と思っていましたのであまりに唐突でビックリしているのであります。

理由はこうであります。
この某旅行業者のホームページ内にやどだより・まちだよりという各旅館が書き込みあってお客様に情報を提供するコーナーがあるのですが(いわゆる情報掲示板であります)、このブログを書き込むついでにそのコーナーにもせっせと書き込みをしていましたところ「認められた」ようであります。総会当日は「サービス優秀旅館」といってお客様からの評価の高い一流中の一流旅館に混じって三流の当館が表彰されるわけで、しかもかたやお客様というユーザーが選んだ高評価の優秀旅館に対し、こちらは「日々の書き込み」という私の独りよがりの努力(たいした苦労はありませんが)だけで評価されたものであり、そのような場に立つことは、人前に立つことを元々好まない私ではありますが、そうではなくともとてもとても気後れすることなのでありました。
ましてや話しが急で約3週間前になってからの通知で、既に他の予定が入ってしまっていて身動きがとれない上に東京は遠くて日帰りはほぼ無理(特急出雲も無くなってしまいましたことですし)。表彰はたいへんに光栄ながらも、ここは丁重に出席をお断りさせていただいた次第なのです。

けれども事務局さんとすれば「それは困る」とのこと。そりゃそうかもしれません。理由はどうであれ「4,500分の1」の栄誉なわけですから…。
そこで「来てくれ(事務局)」→「無理(私)」→「そんなこと言わないで…(事務局)」→「申し訳ないですが…(私)」→「そんなことでは…(事務局)」→「本当に申し訳ありません(私)」等々の押し問答となり、結局、あまりにお断りをするとこんな失礼なことはありませんので、「誰かを行かせます…」と渋々承諾に至ったのであります(事務局さん、手こずらせて申し訳ありません)。
けれども現実的に考えて「誰が行くの?」です。
事務局さんには「私がダメならば、大社長か女将が…」とは言われたものの、両人共に絶対に動かせない所用があって無理。「では、支配人さんに…」と言われたが、支配人もたまたま不在。「それでは若女将に…」であったが、「じゃぁ子供の世話は誰がするの」とこれも無理。「それでは営業部長さんでも、企画部長さんでもいいから」と言われたが、こんな小規模旅館にそんな役職居るわけ無い(全部誰かが兼務しています)。それで結局は、周りにまわって不肖私が出席させていただくことに…。
けれどもどんなに無理をしても、早朝に発って夜中に帰ってくるといった日帰りになってしまいます。例え一日であっても、どんなに名誉なことであっても、ご来館いただくお客様を放っておくわけには行かないのであります。
野村克也氏/現:楽天イーグルス監督は「生涯一捕手(しょうがいいちほしゅ)」と自分のことを表しましたが、私はそれをもじって「生涯一下足番」と常々思っています。どんなに歳をとっても「下足番でありたい」と思っている。それが小規模旅館なのであり、常連様についていただける所以なのだと思う訳なのです。
けれども今回ばかりはそれが裏目に出て「代わりが居ない」となったのです。
それで最終的にどうしたかと申しますと、いろいろと工面した末に結局旅館を休みにしたのでありました。そうでもしないと一日旅館を空けられない。「そこまでストイックにならなくても…」との周囲の声もありましたが、それが当館のポリシーなのですから仕方がありません。
とにかくお上りさん気分で、東京に向かうことにいたします。たった2時間程度の東京滞在となりますが、気持ちを切り替え「一流の風」に浸れる栄誉を感じてきたいと思っております。

【感謝】